◉全ての痛みは神経痛。なぜなら脳も神経であり。信号を伝えているのも神経です。
色々なセラピストが、色々なことを痛みの原因だといっています。
"筋肉が原因ですねー。
筋膜が原因ですねー。
背骨のずれや骨盤の歪みが原因ですねー。
姿勢が原因ですねー。
トリガーポイントが原因ですねー。
この場合は神経は関係ないですよー。"
などなど。
結論から申し上げますと「神経が関係しない痛みはない」ということになります。
◉痛みは神経系のアウトプット
そもそも痛みとは、国際疼痛学会が言っているように、「個人的で主観的で身体的、心理的、社会的関係性などの要素が複雑に絡みった体験」です。
身体からの入力を脳に伝えて、脳からの出力で身体を動かしたり、血管を収縮させたりしているのは、末梢神経や自律神経を含めた神経系です。
心理的や社会的関係性といった場合、主にストレスの文脈で語られますが、これも主に脳です。
つまり、バイオサイコソーシャル/生物心理社会全ての要素の中心にあるのが神経系なのです。
◉そもそも神経系ってなに?
神経系とは、脳、脊髄、自律神経、末梢神経、皮神経など神経全てのことです。
神経系トータルの入出力や、過去の記憶未来の予測、血流や筋緊張など複雑な要素が絡み合って、脳からのアウトプットとして「痛み」という体験が起こります。
つまり、痛みは全て神経系の現象であり、他の組織である筋肉、筋膜、関節などはメインの話にはならないのです。これが最新のペインサイエンスによる答えです。
◉筋肉は出力がなければ縮まらないしコリにならない。
筋肉はそれ自身では収縮できません。中枢神経(脳と脊髄)からの出力信号がなければ縮まないのです。
つまり、筋肉の硬さやコリは、多くの場合結果であって原因ではないのです。
◉筋膜は単なる結合組織。
最近流行りの筋膜リリースですが、あれも科学的な根拠はありません。
筋膜は、靭帯などど同じく硬い結合組織です。それ自身で痛みを感じたりするわけではなく、筋膜に神経線維が伸びていて、分布しているからこそ怪我をした場合などに痛みを感じるのです。
そして、筋膜自体が歪んだり癒着したりすることは、怪我や手術以外で起こっているという明確なエビデンスもないのです。
つまりリリースする必要もないし、そもそも手でリリースすることすらできないのです。もしできたとしても損傷となり、痛みが起こり、炎症してしまいます。
ですので、筋筋膜性疼痛という言葉にも違和感を感じます。
筋肉も筋膜も怪我や手術以外で痛みの原因と特定することはできません。
◉背骨のずれや骨盤の歪みは存在しない。
カイロなどで背骨がずれて末梢神経や自律神経に影響を与え、内臓の調子が悪くなると言いますが、これも科学的根拠はないのです。
もし本当に背骨がズレていたら大変な大怪我です。
また、骨盤の歪みも存在しません。骨盤の仙腸関節には沢山の硬い靭帯がありますし、数ミリ程度動いても何の問題も起こらないのです。
◉トリガーポイントは存在しない。
トリガーポイントという何か特殊な存在もありません。
末梢神経の炎症や脊髄レベルでの敏感さの増加によって、痛い場所を強く押せば、その痛みが関連痛として広がって感じるのです。
ですので、特別なトリガーポイントがあるのではなく、神経系で起こっている現象なのです。
◉姿勢と神経の関係。
ただし、姿勢は末梢神経や皮神経に影響を与える可能性はあります。
例えば座りっぱなしだと上殿皮神経にテンションがかかり腰痛になり得ますし、肩に荷物をかけっぱなしにしていれば、肩甲上神経を圧迫してしまいます。
◉痛みは神経系を中心に考えましょう。
ただし大切な視点は、痛みは複雑という事。
どんなに姿勢が悪くても痛みがない人もいます。
どんなに姿勢が良くても痛みがある人もいます。
痛みは個人的で主観的な体験であり、身体・心理・社会など複雑な要素が絡み合って脳からの出力として起こる現象なのです。
そしてこれら全てに神経系が関与しているので、全ての痛みは神経系が原因なのです。